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■ 障害基礎年金2級(知的障害・事後重症)
当時、彼女は24歳だった。療育手帳(B2)は20歳を過ぎて交付されていた。(障害者雇用の対象者となるために)
いわゆる「軽度知的障害者」だった。小学校も、中学校も普通学級に在籍。しかし、学業成績は「音楽」と「美術」を除いては悪かった。
ただ、自宅以外のトイレ使用ができず、小学校2年ぐらいまで「おもらし」をすることがあったという(「おもらし」については幼いころのトラウマが影響しているという)。
■ 知的障害での認定基準とその対処
障害年金の等級判定ガイドラインには、「療育手帳の区分判定が中度以上(知能指数がおおむね50以下)の場合は1級、2級を検討する」とかかれています。 しかし、IQ49が中度で障害等級2級認定で、IQ50が軽度で障害等級に該当しないではおかしなはなしになります。だから、「総合的な判断」という言葉が出てくるのでしょう。たしかに、IQの数字が高ければ審査は厳しくはなるのでしょう。 わずかな数字の差で日常生活の苦しさが反映されない結果になるのはおかしなはなしになります。 |
人間はロボットではないので、体調のいい日や悪い日があります。IQ検査などの数字も、タイミングが重要になってくると思います。 |
● では「軽度知的障害者」とは IQあるいはDQは50から69までの範囲。成人の場合は精神年齢は7歳から10歳程度。日常生活動作は自立が可能であるが、学校の勉強は困難をきたす。 適切な環境の元では、社会的、職業的自立は可能であるが、時により支援が必要である。(障害認定基準の軽度知的障害者の説明) |
では、この「軽度知的障害者」の認定基準は、医師が作成する診断書の「日常生活能力の判定」の評価チェック欄のどの項目に該当するのだろうか?
(3)と(2)の内容は以下のとおりまずは、
まずは、(2)
(2)知的障害を認め、家庭内の日常生活は普通のできるが、社会生活には援助が必要である。(例えば、簡単な読み書きができ、会話も意思疎通が可能であるが、抽象的なことは難しい。身辺生活も一人でできる程度) |
そして、(3)は、
(3)知的障害を認め、家庭内での単純な日常生活はできるが、時に応じて援助が必要であある。(例えば、ごく簡単な読み書き計算はでき、助言があれば作業は可能である。愚弟的指示であれば理解でき、身辺生活についてもおおむね一人でできる。 |
(2)は、障害年金の3級相当だと思われます。つまり「不該当」となる可能性が大きい。
(3)は、障害年金の2級に相当できるかもしれない。「該当」する可能性がある。
この差は大きい。
参考までに、(4)はこのように書かれています。(2級相当)
(4)知的障害を認め、日常生活における身の回りのことも多くの援助が必要。(例えば、簡単な文字や数字は理解でき、保護的環境であれば、単純作業は可能である。習慣化している事であれば言葉での指示を理解し、身辺生活についても部分的にできる程度) |
●対処方法
①「日常生活の不自由さ」(彼女は母親と2人暮らし)
〇 現在の生活について、具体的に、同居の家族がどのよ
うな支援を行っているかどうかを説明する必要がありま
す。
ご家族の方は、小さいころから毎日接しているため、声かけや援助するのが当たり前になっている。そして問題であるという行動が見えていない場合があります。「援助」の感覚がないことも事実です。 1 朝でかけに、靴ひもを結んであげる(本人が結ぶと、す 2 金銭管理ができないため、毎日、必要分のお金を手渡し 3 もちろん、食事の用意などはできない(あるいは、「し 4 部屋の中が乱雑になっていても、何もしない。 5 「初めての場所」にバスなどの公共交通機関をに利用し |
② 教育歴(特別支援学級、養護学校に在籍していなければ、
具体的な理由)
彼女の場合は、母親が、自分の娘が、他の同年齢の子に比 ▶ しかし、彼女は、授業が分からない、行動が級友について |
③ 就労(作業訓練)上の問題点
1 仕事内容について、支援員が「分かりましたか」と尋ね (相手の話が理解できていない場合も、困ってることを 2 対応できないような一方的な要求をする。 (欲しものが手に入らないと作業動作が止まってしま 3 一つのことが気になると、他のことが全くできない。 4 好きな活動を途中で中断させられることを嫌う。 (「またね」が理解できない) 以上のようなコミュニケーション能力の無さを「診断書作 |
■ 相談者の場合
● 「知的障害者」の障害年金申請のケースは、ほとん
ど、障害年金申請のために必要な「診断書作成」を依
頼する医師を探さなければならない点です。
ほとんどの知的障害者は医療機関を受診していませ
ん。
軽度知的障害は、医療機関の治療対象ではありませ
ん。障害であって、病気ではないのですから。
そこで、「療育手帳」取得時の検査内容を市区町村の担当窓
口に、IQやDQの数値を教えてもらいます。そして、療育手帳
の交付を受けた人については、障害年金を申請するための医療
機関を探すことになります。(成育歴やどのような学校で学ん
でいたかなどの教育歴、就労歴そして一番大切な日常生活能力
について、相談者の家族などに聞き取りをした内容、加えて
「療育手帳」の検査内容などについて資料を作成し、医師に提供
することになります。
神戸市の場合
神戸市知的障害者更生相談所 | 078-333-3330 |
神戸市子ども家庭センター | 078-382-2525 |
そして、
障害年金申請用の診断書作成を依頼する医師に
① 上記のDQ(発達指数)などの数値が書かれた書類
② 日常生活の状況
③ 成育歴
④ 教育歴
などと一緒に、相談者にまず、医師の診察を受けてもらい、「診断書」を作成してもらいました。
医師によっては「病歴・就労状況等申立書」のコピーと一緒に受診することを希望される方もおられます。
■ 成育歴に問題があったかどうか
Aさんの場合、6歳の時に、両親が離婚。母親と暮らすようになる。
確かに、近所の子供の用に、活発な子ではなく、いつも母親に寄り添っていた。友達と遊ぶこともなかった。
小学校に入学。普通学級に在籍。音楽やお絵かきは好きだったが、学校の勉強にはついていけなかった。
級友と遊べないことから、次第に「いじめ」にあう。また、幼少期のトラウマから「おもらし」などもしたらしい。それも、級友のいじめを増長させたのかもしれない。
しかし、母親は、「普通学級」にこだわった。可能な限り、同じ環境で小学校、中学校生活で、教育を受けさせたかった。授業がわからない。行動が級友についていけない状況が続きました。動きがどうしても、他の生徒より遅れてしまい、苦情になったこともあったが、頑張って、できるだけ学校には登校しました。
一般の高校への入学を希望したものの、学力不足もあり、服飾関係の専門学校に入学する。
Aさんは、自由に絵を描くことが好きで、いろいろな「服のデザイン」を書きたかった。学校側もカリキュラムに沿った作品を提出すれば「単位」を取得できるということでしたが、その学校側の配慮も、Aさんの能力を超えていて、作品の提出も難しい状態でした。
また、コミュニケーションが苦手なために、友達もできず、助けを求めることもできないため、進級も難しくなり、2年後に自主退学する。
日常生活についても、家事は全くできず、母親が全面的に世話をしました。
専門学校退学後は、自信喪失、自己嫌悪から、家に引きこもっていましたが、母親や、専門学校入学時に金銭的援助をしてくれた祖母に勧められ、「通信制高校」への入学を目標にすることになり、2年後に、希望通り、通信制高校に入学を果たす。通信制高校は通学を求められないため、昼間はアルバイトなども経験する。
しかし、ここでも、単純作業にもかかわらず、コミュニケーションの不足から、ミスも目立ち、長続きせず。通信制高校へのレポート提出もできず、4年間での卒業を果たせずにいた。20歳を過ぎたころから、通信学校の教師から、卒業後の将来についての仕事に就くには、一般事業所での就労も困難だと判断され、Aさんの「幼さ」から「療育手帳」の取得を勧められ、療育手帳B2の交付を受け、職業訓練として「社会福祉施設の作業所」に通うようになった。
将来への不安もあり、障害年金の申請にいたる。ただ、Aさんの場合、DQ(発達指数)が54という数値であることから、「軽度知的障害者」になることを説明し、障害年金については障害等級2級に該当しないかもしれないと告げる。
しかし、私が初めてAさんに会った時の、彼女の姿が忘れられなかった。夏のことで、彼女は「ピンクのTシャツ」姿で、しかも、そのTシャツは何日も着ているように「少し薄汚れていた」のです。20歳代前半の女性が初対面の人と会う姿ではなかった。
この姿を見て、Aさんは「障害年金」の対象者と確信しました。
障害年金申請用の診断書を作成していただいた医師も、AさんはDQ54の数値以上の「幼さ」に共感していただき、実情通りの診断書を作成していただき、障害基礎年金2級が決定足しました。
Aさんについては、障害年金更新の時にもお会いしました。「きれいになられてた」ので、「明るく」なられてたので、「障害年金に不該当」とされるかなと不安だったが、日本年金機構は、Aさんには、まだ障害年金が必要とみとめてくれた。ちなみに、当時(更新時)、Aさんは、就労継続支援事業所A型で働いていたため、更新の診断書作成依頼として、その事業所での様子を資料として添付しました。(下記)
■ 仕事をする上での問題点
Aさんの場合、就労継続支援事業所A型で、公園などの掃除や食品づくり(みそづくり)などをしていたました。 ’平日5日、4時間程度の作業に従事)
① 仕事内容について、支援員が説明すると、「分からないこと」も「分かりました」と答えてしまう。
② 困っていても、「助けて」という言葉が言えない。
③ 一つのことが気になると、他のことが全くできない。
Aさんのように、「目立たない問題人」は、ていねいに、仕事をする上で生じる問題点を拾い上げなければならないと思いました。
■ 就労することの意義
仕事をすることで、社会とつながることの意義を大切にしてほしい。
■ 軽度知的障害であっても気づかれない人たち
平成30年度の内閣府の障害者白書によりますと、知的種会社は約108万人程度いるとされていますが、5年前の平成25年は54.7万人でした。5年間で2倍に増えたことになります。
普通、知的障碍者が急激に増えたとは考えられません。これはどういうことでしょうか。
知的障害に対する認知度が高まって、療育手帳を申請する人が増えたと思われます。「支援が必要なのに気づかれていない人はまだかなりの割合で存在すると思われます。
▶ これらの人たちは、仕事に就くと、認知機能の弱さ、対人スキルの乏しさ、身体的不器用が原因で、言われた
仕事がうまくできない、覚えられない、職場の人間関係がうまくいかない、時間通りに仕事に就けないなどの問
題を起こし、仕事は長続きしない。
▶ 健常者と見分けがつきにくい
知的なハンディを持った人たちは、普段生活している限りではほとんど健常者の人たちと見分けはつきませ
ん。特に軽度知的障害の人たちは、通常の日常会話も普通にできるため、どこに障害があるのだろうと首をかし
げたくなることもあります。違いが出てくるのは、「何か困ったこと」が生じた場合です。いつもと違ったこと
や初めての場面に遭遇すると、どう対応していいか分からず思考が固まってしまうのです。
▶ 「軽度」とは
「軽度」という言葉は、中度や重度よりお軽い、それほど支援を要しないというわけではないはずです。確かに、本人も普通を装います。支援を拒否することもあるため、支援を受ける機会を逃してしまいます。結婚して、出産する。ある新聞記事に、子どもの虐待などを繰り返す親には「知的ハンディ」があると書かれていました。予測できないことに対応できない、パニックを起こすなどの行動は「知的ハンディ」を持った軽度知的障害者の特徴です。こういっt問題行動は、彼ら、彼女らのSOSなのかもしれません。この人たちは弱い存在なのです。
だからというわけではないのでしょうが、「療育手帳」を申請して、福祉サービスや障害者雇用を利用するということが最近多いと言われます。今回のコロナウイルスで、日本経済が受けた影響は多大です。リーマン以上の破綻が来ると言われます。支援が必要なひとにとっては、やさしい「療育手帳』であってほしいと思います。そういえば、最近、40代、50代で、知的障害で障害年金を申請する人が増えたと聞きました。コロナウイルスでマスクを配布する政府です。きっと、障害を持つ人にも優しいと思います。